FC2ブログ

ars combinatoriaな日々

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シラノ

♪新年半月過ぎてしまいましたが,しごと忙しいけど観るものは観なければ!ということで,ブベニチェク・ニューイヤーガラ~カノン~(バレエ,1/5),東京国立近代美術館 60周年記念特別展 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年(1/13)と濃かったんですが,まずはまだ上演されてるものからとゆーことで,日生劇場ミュージカル『シラノ』から。

 1/12(Wキャスト:濱田めぐみ&田代万里生),1/14(彩吹真央&平方元基)。

 シラノというとドパルデューの映画しか知らなくて(ちゃんとプログラムが取ってあったよ),それもうろ覚えついでに何も事前知識を入れないで観ました。原作(戯曲,新訳:渡辺守章訳)も2回目観てから買ったのでまだまだこれからです。

 とにかく鹿賀さんのシラノに尽きます。演技とかじゃなくて鹿賀さんの存在感なんですが,それがシラノという役柄にあっている。そしてなんといっても声がいい。登場して第一声できゃー結婚して!みたいな(いや声だけだし)。ロクサーヌとクリスチャンはWキャストなのでそれぞれの持ち味役作りはもちろん違いますが,概ね男前なロクサーヌにかわゆいクリスチャンというお似合いな二人でいいじゃないか,シラノはこんなにいい男なんだからもっと素敵な人に見初められて…では話にならないわけですけど。
 そもそも鼻がでかいくらいどうだっていいじゃないですか!というカッコよさで,うーんでも喜劇的に描いてるだけでもっとフリークス的だったんだろうか。いや実在人物のシラノにそこまで描写はなさそうです(本物シラノのことは後述)。
 舞台もお腹を空かせた彼に少女がまるでファンになっちゃったみたいに接するし。それにシラノっていくつなんだろう? ロクサーヌはいとこで,お兄様って呼び方はそもそもそんなに年の離れてるわけでもないから,ドパルデューや鹿賀さんのような貫録のある人が演じるけど。
 実は肉体的欠陥と思い込んでいるのはシラノだけで,単なる不器用というのは違うコンプレックスとプライドの絶妙なブレンドが作り上げた性格と挟持が女性を遠ざけてるだけなのかなあ。遠ざけてるというのはシラノだけの思い込みかもしれないし,そここそが魅力で。『白野弁十郎』として日本で人気を博したもよくわかる,単純なヒーローでもピカレスクなアンチヒーローでもないですね。

 舞台の話に戻ると,初見ではミュージカルである必要性あるのかなあ?というのが正直な感想で,レトリックを駆使した台詞また言葉そのものが主題なのためか歌が少なめで,印象強いメロディもガスコン隊くらいでした。もちろん心情は歌い上げた方いいし特にシラノとクリスチャンは共謀者として秘密,また互いに真反対なコンプレックスを抱いているので特にそういう部分は独白ではなく歌い上げた方がこちらに届くものです。

 三角関係ということで,どうせなら『椿姫』や『オペラ座の怪人』みたいな三重唱があればいいのに,例えば「神さまクリスチャンとお兄さまをお守りください〜♪」「ああロクサーヌ愛している〜♪」「この想い知られてはならぬ〜♪」みたいな。と妄想してたんですが,2回目でやっとわざわざ3人一緒に歌わない意味がわかりました。
 まずバルコニーのシーンはわりと単純に,シラノがクリスチャンの代役をしているので声色を真似ていることに気付かせではならない。またロクサーヌとクリスチャンの二重唱に取り残されるシラノの孤独がはっきり視覚化される。
 逆に,毎日届く(クリスチャンを装ってシラノが書いた)手紙を読んで戦場で駆けつけたロクサーヌが,本当に魂の通い愛し合っているのはシラノとロクサーヌというこの二人の距離を置いた二重唱の間に呆然と立つクリスチャン。3人の想いが同時に伝わらないからこの行き違いが起きていること,誰と誰が惹かれ合っているのかを残酷なまでに伝える手法なのでした。
(追記:3回目1/26観たらクリスチャン歌ってましたね。でもほぼユニゾンだから〜)

 やっぱり初見のあとはシラノ一人芝居ってもいいんじゃないかなとも思ったんです(そしたら白野弁十郎は一人芝居の上演形もあったそうですね)。だって(シラノの愛する)理想のロクサーヌ,(シラノのなりたい)理想のクリスチャンっていうのはシラノの中にしかないから。
 キャストの良し悪しではなく,そんな理想は存在しない。むしろシラノは理想を追い求めるのではなく,自分をさらけ出して生きればよかったのに,むしろみんな幸せだったかもしてない。でもそれが出来ないからこそシラノで,誇り高い生き方・心意気も持ち主なのです。そういえば日本語訳の話で必ず書かれる「心意気」ですが,実はご自慢のレトリックではなくその心こそシラノの一番美しい部分,シラノらしさなのでしょうか。

 クリスチャンは最期こそシラノのおかげでロクサーヌに芯から愛されていたと思い込んで死んでいきますがシラノの共謀してるのですから,何もかもわかっていてだからこそ悩みます。可哀想なのはむしろ一人だけ何も知らないロクサーヌです。気付けよ!って話だけど,いや気付いていたのか…どうなのでしょう。
 そのあたりはあえて明確にはしていませんが,役作りは二人のキャストでかなり変えていて,クリスチャンの死から15年という歳月を濱田さんはその前を子どもっぽく,その後を声色など老け演技で作っていました。これはどちらかだけでいいんじゃないかなあ。彩吹さんの方が表面上はさほど変わらないようでいて,むしろはっきり変わるというよりも登場から徐々に成長していったようでこちらの方が個人的には好きかなあ。
 クリスチャンは2人とも可愛くて歌も上手いのでヨシ。ただ平方くんはお見送りのときの方がキラキラで,もちょっと舞台で活かせてないのかなあ。もったいない。他キャストでは鈴木綜馬さんのド・ギッシュがいやな役回りのようでいて,どこかキュートで実は憎めない美味しい役どころでした。

 オケはパーカッションの特にスネアドラムのリズムが主導する単なる伴奏ではない音が,世界観を作るひとつになってました。セットはシンプルですがとてもよかった。これは初演のときと同じなのかな。最初の芝居小屋の雰囲気を作る幕が落ちるとつや消しの銀の大きな板が現れ,投影した画像が象徴的で,最近のセットを作らないで写真や映像の投射は好きな演出ではないんですが,とても効果的でした。
 それにプラスして例えばバルコニーのシーンはジャスミンの花が画像と共に造花のアーチとロクサーヌのドレスの花,シラノが昔を思い出すときの鮮やかな緑,そしてなんといっても修道院の真っ赤な紅葉にはらはらと散る大きな葉。シラノの最期にはまたジャスミンの花。具体的なイメージであり彼らの心情であるという舞台ならではの演出でした。

 最後に(ってヒストリアか),公演プログラムに実在したシラノは同性愛者だってあって地味にショックなんですけど…。いや有名な話として戯曲にも注釈でいくつかありました。えーでもそしたら,本当に愛してるのはクリスチャンで純粋に彼のために代筆したのー?じゃなくてロクサーヌがフィクションなんですけど。
 そう思うと本当にロクサーヌを愛してるならクリスチャンの誇りを守るよりも,真実を話した方がシラノ自身のためでもロクサーヌの幸せのためでもあったのに!という疑問は解決し,シラノは美しいクリスチャンと自分が一体となって理想とする男性になっていたときが一番幸せだったんじゃないかという,舞台の感動とは何だか違うところに着地してしまいました。

 

 いやホントにいい舞台だったので,ぜひ生で体感して欲しいです。2幕はハンカチを用意して! 東京公演:1/6~1/29日生劇場,大阪公演:2/8〜10 新歌舞伎座;ホリプロサイト
 公演中にシャンテでパネル展やってます。【左】サインパネル【右】ガスコン隊の衣装

コメント

仏像

ツイッターまだなれてないので、こちらに書きますね。

すきな仏像で阿修羅像と弥勒菩薩半跏思惟像あげられてましたが、「百億の昼と千億の夜」はやはり読まれました?

ちなみに私が最初にシラノを知ったのは、ちょっとしつこいかもしれませんが「リバーワールド」シリーズからです。

  • 2013/01/27(日) 23:41:24 |
  • URL |
  • hiro_nkm #2PRdxZIg
  • [ 編集 ]

Re:仏像

読んでないです〜。(マンガの)萩尾望都さんの表紙のタイトルに惹かれてずっと興味はあるんですが。ミッション系育ちで仏教の知識がからきしなので,あくまで造形として好きなんです。図録の解説や入門書程度でまさに見仏。

  • 2013/01/28(月) 23:51:46 |
  • URL |
  • まつい #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://arscombinatoria.blog78.fc2.com/tb.php/548-1c58a1dd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。