ars combinatoriaな日々

アメリカン・バレエ・シアター《白鳥の湖》

♪名古屋は写真のトリミングやリサイズしてからってことで,順番にまずはアメリカン・バレエ・シアターの来日公演《白鳥の湖》です。これはマッケンジー版の日本初演で,ロットバルトが2人という煽りでずっと気になってたんですが,ソワレでも仕事帰りじゃ間に合わないし,名古屋は4公演のつもりだったのでどーしよーかなー観たいんだけどな〜とギリギリまで迷ってました。で,結局追加公演のアナニアシヴィリの行って参りました。夏休み取ってマチネです。

 白鳥湖はどーしても演出・解釈を中心に観てしまうんですが,今回はとにかくアナニアシヴィリのオデットとオディールから目が離せませんでした! 1階席なのに彼女がいるとオペラグラスが離せません。表情はもちろん全身からしてたおやかで品があってでも凛としたオデット。3幕では,誘惑するというよりその存在自体が魅力的過ぎて何の作為もいらないのではというオディールは非常に豊かな表情で蠱惑的。もう一人だけで《白鳥の湖》の物語で,今更ながらオデットとオディールのストーリーなのねと再認識しました。

 そんなわけで,この演出の目玉のロットバルトさんなのですが,わたしがアナニアシヴィリに目を奪われてたせいかそれほど存在感は感じられなかったかも。物語としては非常に彼を中心に作られていて,まず前奏曲の間に人間オデットが白鳥に変えられるところから始まるのですが,醜い悪魔としてロットバルトが登場してオデットを見つけると美しい人間の男に変身して(これが2人で演じ分けられる)オデットを誘惑して白鳥に変えてしまう。2幕は悪魔,3幕は人間。3幕ではロットバルトがソロで踊り,花嫁候補達(民族舞踊が姫達の国の設定でわかりやすい演出)や女王までも誘惑しているよう。だからオディールはオデットと間違えられたというよりジークフリートは確信的にオディールに魅入られているように感じました。4幕は2人が湖に身を投げることで魔法を解いて,最後は来世でのハッピーエンド。

 終始ロットバルトが物語の軸にいるはずなんですが,もーひとつ存在感が薄いのはむしろ美しい男性として踊ってしまうがために,邪悪さ故に惹かれてしまうようなロットバルト自身の悪の魅力を放棄してしまっているからなのかもしれません。うーん,プリンシパルにやらせてしまうくらい思い切りがあれば違ったかもしれないけど。
 これまで観たロットバルト達の方が,例えば鳥の羽を付けて身軽で最後に羽をむしられる姿が痛々しいとか,ブルメイステル版の3幕で自分ではなく民族舞踊集団を使って舞台に魔法かけるかのように幻惑させるとか。昨年の氷上のインペリアル・アイス・ダンサーズのロットバルトは小柄だし若くもないのに,それが禍々しさと共に人間らしさを感じさせて惹かれずにはいられないような,ロットバルトであるが故の魅力を存分に発揮していたかもしれない。彼を魅力的にという発想のはずなので非常に惜しい。

 舞台全体としては1幕の友人達の衣裳はじめ衣裳や美術が美しかったです。1幕で質感がしっかりして随分立派な衣裳だな〜と思ったら貴族と村人達という設定らしい。随所に説得力のある演劇的な演出ですね。あの貴族の衣裳は重くて踊りにくんだろうなーと思われますが,長い綺麗な裾が舞って素敵でした。
 7/24東京文化会館。オデット/オディール : ニーナ・アナニアシヴィリ,ジークフリート : ホセ・マヌエル・カレーニョ,ロットバルト : ヴィターリー・クラウチェンカ,ジャレッド・マシューズ。

ブルメイステル版《白鳥の湖》

♪29日に国際フォーラムにて。めずらしくホールCで舞台モノです。98年に初めて観て以来,3度目(98年の感想は今読み直したら意外にベタ褒めではなかった)。招聘事務所も変わって久しぶりの来日ですね。
 今回チケ取りに気合いを入れて初日に電話したら,その場で座席を教えてくれたけど6列目で,前すぎるけどいいか〜とは思ってたけど,実際はピット作って2列目でした。そう言ってくれたらもう少し後ろに出来ないか聞いたのにー。舞台全体が一度に観れなくて,まあ何度も観てる演出だからいいんですが(初見のお友達にはもうちょっとバランス良く観て欲しかったけど),それでも一番の見どころの3幕はすっごい迫力で良かったです。そしてロットバルトさんが結構若くて素敵だった。この3幕は民族舞踊がロットバルトさんの手下という設定で,照明やマントなどで禍々しく幻惑するんですが,ロットバルトさんが素敵なので,オデットはおバカ王子よりこちらの方が素敵だと思わないかしら〜なんて。ハデスに攫われて女王様になったペルセポネみたいに。ただ今回ホールのせいか全4幕間に全部休憩が入るので(たぶん前はそんなじゃなかったと思う),ブルメイステル版の物語性(人間オデットの白鳥への変身と,元に戻るハッピーエンド)の流れが途切れてしまったのと,3幕と4幕の動と静の対比が薄れてしまったのが残念でした。
モスクワ音楽劇場バレエ・来日公式サイト

マリインスキーの白鳥湖追記&かもめ食堂

♪わたしのもともとの日記はいろんなことごちゃまぜなんで,いろいろ書くことがあるのは短くても分けるべきなのか,でも分けちゃうとなんか面白味にかけるよーな気がするので,ちょっと困ってます。

 BSのちゃんと生時間に観ました。衣裳なんかが結構違うんですね。先日の来日公演ではロパートキナの評判がよかったようで,確かにTVで観ただけでもその表現力,特にオデットの叙情性,美しさ優しさ寂しさの中の情の濃さ…,一転して蠱惑的なオディールと正にイメージ通りで素晴らしかったです。でもでも生で観たからというだけではなくて,ヴィシニョーワの冷たいくらいの孤高の美しさがわたしのオデット/オディール像かもしれません。何故か白鳥湖はアメリカ人とか妙に長身とかちょっと規格外のオデット/オディールに当たることが何度かあって(あんまりキャストでは決めないので),これはこれでアリだな〜と思ってました。

 で,その前に『かもめ食堂』を観てきたんですが,時間ギリギリとはいえなんと立ち見! 人気があるとは聞いてたのですが〜。映画は原作を読んでから考えた方がいいのかな?と思ってるんですが,これって絶版or品切? 映画だけでいうと立ち見はそんなに苦ではないほど,まーったりと何も起こらず,でもそもそもフィンランドで定食屋って何故?から始まるたくさんの謎は1つも解明されない不思議な映画でした。

マリインスキーの白鳥湖放映とか。

♪先週観たおバレエ,ちょうどNHKーBS2で放送するんですねー。明日(というか今日)24:30〜です。もちろんロシアでの録画で,ロパートキナ主演,指揮はゲルギーです。
 こういうのって,損した!じゃなくてこないだ観たばっかりのを反芻できてうれしーいとなります。基本的に何でも生で観る・聴くのが一番!(映画も映画館で!)と思ってますが,特にバレエは違うわーと改めて実感しましたので,もっとちゃんと出掛けよう!と。ただ来年は来日オペラがすごいんですよねー。でも取りあえず新国の《さまよえるオランダ人》は取っちゃったけど。
 あ,明日はなんとなく『かもめ食堂』を観に行く予定@早稲田松竹。そのために今日は頑張って残業しました。『プラダ…』がわたくし的にややハズレだったので,『デスノート』でも見直そうかと思ったんですが,前編はもう無理だったんであきらめました。で何で『かもめ…』? あとあと新作で観たいのに『マリー・アントワネット』がありました。

マリインスキー・バレエ《白鳥の湖》

♪すっごく久しぶりにオーソドックスな白鳥湖を観ました。セルゲーエフ版って忘れてたけど,新国で使ってた道化と家庭教師がいて,現世でハッピーエンドのでしたね(でも新国は1幕に憂鬱な王子のソロがあったような気がしますが…?)。ラストは来世でハッピーエンドが一番好きですが,オデットが人間に戻るブルメイステル版が一番整合性が取れてると思います(このへんの話は[ars combinatoria Vol.3] で)。
 で,今回のプロダクションで一番よかったのは実は衣裳だったりして。1幕の群舞やパ・ド・トロワなんかの衣裳が白を合わせて上品ででも王族とは違う絶妙なバランスで,これは2幕の民族衣裳にも期待したら,こちらも色の使い方が単調じゃなくて,安っぽくないのに軽やかに踊りやすそうにできてるのが素敵でした。よく凝りすぎて踊りにくそう〜ってあるじゃないですか。
 肝心のバレエの方はオデット/オディール(ヴィシニョーワ)につきると思います。とにかく気高く美しい。王子がちょっともさっとしてるので(すみません…,友人達の方が見た目はカッコイイです),パ・ド・ドゥよりもオデットのソロの方にうっとりしてしまいました。その美しさ気高さはオディールも同じで,大体オディールに惹かれる王子は“同じ女性が演じてるけど全然違うじゃないかっ”と毎回突っ込みたくなるくらいオデット/オディールは演じわけられているものですが,このオディールはオデットと同じような美しさを誇っていて,これなら王子が同じように惹かれて愛を誓ってしまう(というかなんか忠誠を誓ってるみたいだ)のも納得できそう。でももちろんちゃんとオデットではないの。オディールの衣裳は少し青みがかっていて,全部黒の方がいいのにーと思ったら,照明を暗く邪悪な感じを出したらすごく似合うの。この舞台は照明もトーンが押さえ気味で全体の雰囲気を上手く作っていると思います。と,上品にまとめてあるのにちゃんとオケがロシアオケでパーカッションが脈絡なく炸裂だったりとうれしかったです。
 それとロットバルトは踊るタイプなので衣裳も軽やか系ですが,こういうときは鴉ぽく見えがちですが,羽根がちゃんと梟ぽくて作ってありました。現世でハッピーエンド=ロットバルトが倒される,なので,もう少し1幕2場のロットバルトの役割を大きくしてくれた方が,強い悪に打ち勝ったのだーという爽快感がもうちょっと出るんじゃないかしら。他は群舞がもうちょっと揃ってるといいんですがー。このへんはレニングラードを観た方が満足できるかも? この劇場はそのへんどうなってるのかよくわからないところです。
 あと不満なのはプログラムで,\2,000のお値段は来日ものならまあ普通ですが,団員のプロフィールが少ししか載ってないのはひどいんじゃないでしょーか。
 まあともかくやっぱり綺麗なものを観るのはしあわせですねっ。来年はオーストラリア・バレエが英国王室パロみたいのを持ってくるそうで,面白そうではありますが,古典だけどちょっと演出考えてますくらいのブルメイステル,ピーター・ライト,ブルーン版あたりをまた観たいんだけどなー。

マリインスキー・バレエ《白鳥の湖》セルゲーエフ版,衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
オデット・オディール:ディアナ・ヴィシニョーワ,ジークフリート:イーゴリ・コールプ
12/9 東京文化会館