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ars combinatoriaな日々

鉈切り丸@シアターオーブ(ネタバレあり)

【11/21追記しました】
 

シアターオーブ『鉈切り丸』。11/9と11/16の2回。東京公演は11/8〜11/30とまだまだ続きますが,大阪が先だったのでようやくといった感です。
 新感線は少なくとも生では観たことなくて,いのうえシェイクスピアと言われてもよくわかっておりません。まーフラット?な目線ということで。
 なお元々リチャード三世のファンでした。イアン・マッケランの映画(文字化けした場合テキストエンコーディングはISO2022など)で! また大河『平清盛』で平時忠を演じた森田剛くんは舞台が評価されての(大河への)起用のとことで楽しみにしてました。

 初見は朧な記憶を探りながら(シェイクスピアの)誰と(源氏の)誰がリンクしてるのか考えながら観てて,面白かったけどどうもしっくり来ないなあと思ってました。で,いろいろ忘れてる〜と『リチャード三世』を読み直したり1週間でいろいろ調べて2回目に備えるつもりがやっぱりダメ人間。

 でも2回見てわかったような気がします。ああこれはラストの有名な「馬をくれ,王国をやる」ではなく「羽をくれ」から逆算して出来てる,如何にシェイクスピアと違うかという部分が大切なキャラ造形なのですね。(そこネタばれしてたけどわかんなかったのです←ばかー。馬じゃないのは範頼が馬に乗れないのですぐにわかりますよ)

 範頼(鉈切り丸)にはどうも権力欲を感じない,これが悪漢として見ようとすればピカレスクな魅力に欠けるかもしれない。そして哀れではなくかわいそうなひと。
 愛されたい,美しくありたかった,羽が欲しかったという鉈切り丸の願いは皮肉なことに,葬られ書き換えられた『吾妻鏡』で叶えられます。シェイクスピアが描いたような屈指の人気を誇る悪漢は闇に葬り去られた,いえ元々そんな悪い人はいなかったのです。

【11/21追記】
 ただ醜いことは間違いなくコンプレックスだけど,頭がよさ・人より優れているという優越感の方が勝っているのかもしれない。母以外の周囲は不具に対し冷たくないし,皆異母兄弟で頼朝を除いてそれぞれ微妙な上下関係があり完全なピラミッド型でない。
 それががむしゃらな上昇志向とは違っているのかも。このへん昨年の時忠を連想してしまいますね。 あの時忠は本当に良かった,単純にこずるいのかと思ったら芯の部分がセンシティヴで。

 そういえばかわいそうなひとといえばヴォイツェクですが,あれはただひたすら周囲がひどかった。『鉈切り丸』はよくもわるくも表層的で,逆に 『ヴォイツェク』は観る方もやる方もヴォイツェク自身も内面を削り取る舞台でした。歌があることで心情が表出するのかな。『ヴォイツェク』のこともまとめたいのですが〜。
【追記ここまで】

 またリチャード三世のし上がりと源氏の勃興をものすごく上手く当てはめているんですけど,鎌倉幕府は今まさに成立しようとしていて,確立している権力を巡る争いとは性格が違うというのも,範頼が権力欲・上昇志向だけではないんだろうなというところかも。
 頼朝の生瀬勝久さんのコントパートがちょっと尺長く,政子さんがそもそも強烈過ぎるから既に頼朝は範頼がいなくても傀儡のようで,意外な歴史の裏側というには史実の方が優ってるみたい。

 生演奏が下座みたいなところなのが面白く,その音楽は迫力がありながら終始“哀しみ”が通奏低音のようで,それがまた範頼の悲劇性を予感させ最初から悪漢に見せていないのかもしれません。

 

 2回目の休憩中にコラボドリンク。「異端児」はアルコールできっと寝ちゃうからノンアルコール「野心」で。巴さんに野心は感じなかったですけどねー。

 

 結局ちゃんとに読み直せなかったたけど坪内逍遥譯シェークスピヤ全集から。ハードなお話にかわゆい装幀,活版の文字も旧字も堪らない! 奥付は昭和49年再販,新樹社。初版はいつなんでしょう。古本屋で一目惚れして買ったきりでした。参考画像でマクベスだけ箱入で,あとオセロがあります。新潮文庫は前述の映画のとき読みました。

ロミオ&ジュリエット2013(その1)

 

■2011初演
■2012来日公演

♪トランスフォーム中みたいなヒカリエのシアターオーブで,再演ロミオ&ジュリエット。My初日は9/14(土)ソワレ。ロミオ:柿澤勇人 ,ジュリエット:フランク莉奈,ベンヴォーリオ:尾上松也,ティボルト:城田優,マーキューシオ:水田航生,パリス:加藤潤一,死:中島周。

 なんといっても柿澤ロミオ! 可愛いし歌える。ロミジュリでいつも不幸の元凶にしか思えない神父様(安崎求)とのハモりに感動したし,お姫さまだっこ可愛いしーと。この日バルコニーでスマホ落としちゃったのはすごく焦ってたろうけど,ドジっこあわあわアドリブもロミオらしかった。
 多少なりともジュリエットが少女から女性へと成長していてもロミオは少年のままでよかったと思います!さっさと連れて逃げろなんてこのロミオには突っ込めないよ。

 そんなロミオだから「僕は怖い」で中島さんの死が本当に恐ろしい。あのぬめぬめ感。かと思うと結婚式のシーン(エメ)では明らかにキリストのポーズだしマントヴァから生肌。ちょっと解釈難しいなあ。仏版では手紙を破いちゃうんでストレートな表現だけど,日本版の他の死を見てまた中島さんを見たい(←9/26行きます。特典写真は城田ティボルトだけど)。

 初演は1回しか見れてなくて(城田ロミオ),衣装は赤青じゃないうえアニマル柄でごちゃごちゃしてどっちがどっちかわからないよ!とイライラしてたんですけど,舞台広いせいか3階からで見通しがいいからかスッキリ見えて,でも今度はあの猥雑感もよかったんだよなと難しいなあ。
 でもでも今回は左右の袖にセットを広げてそちらで演技することも多いのでちょっと散漫に見えたかも。真ん中が空いた空虚ともいえるけど,そういう寂寥感はちょっと違う気が。

 城田ティボルトはわたしはアリだと思うんですけど,美しいのは言うまでもなく貫禄ありすぎて,ロミオとジュリエットの若い恋よりキャピュレット一族のどろどろをいろいろ妄想しちゃいますよ。
 ティボルトはさーこの舞台では既に跡とりとして期待されてるけど,ついでにジュリエットのフィアンセででもキャピュレット夫人(涼風真世)との関係が実は本気だったりするんだぜ(←ウソです。だってそしたらピンクパリス様の出番がっ)。でも更に禅パパ(キャピュレット卿:石川禅,ソロ素敵でしたわ)もいるんですよね〜濃いよ濃過ぎるよキャピュレット家。

 そうそう柿澤くんは大河『平清盛』の以仁王しか知らなかったので,待望の生舞台でした!ロミオがあまりにかわゆらしかったので,一週間前におみやげにいただいた唐菓子(からくだもの)を食しながら「以仁王の令旨」の回を見たら,ちょうど清盛が「欲こそが男の力の源」って言葉を思い出してましたよ。
 延々読み上げる令旨はアクアタルカスに乗って画面は平家の奢り。このためにミュージカル俳優さんを選んだのね〜と放送時も思ったけど,改めて力が入りすぎてちょっと上ずった若い声がらしいですね。同じ頃放送の歌うヨシヒコの回も残しとけばよかったあ。


 2回目は9/21(土)ソワレ。ロミオ:古川雄大,ジュリエット:フランク莉奈,ベンヴォーリオ:平方元基,ティボルト:加藤和樹,マーキューシオ:水田航生,パリス:岡田亮輔,死:宮尾俊太郎。
 1日に違うキャストで見れちゃうマチソワも考えたんですが,最初に買ったソワレのみで。平日消耗してるので体力に自信がなかった…。どうしても前回(再演初回9/14)と比べちゃうんで予めすみません。

 柿澤ロミオがただただ可愛いかったんで,古川ロミオの個性がなかなか見えて来なかったんですけど,最期のシーンまで来て,ああこのロミオは一歩一歩成長してくロミオなんだ~と腑に落ちました。
 加藤ティボルトは正にこの舞台のティボにぴったり。満たされない,飢え,餓えた野獣のようなのに,切なさ寂しさを感じて,とてもしっくり来ました。
 今回の一番のごひいきは平方ベンヴォーリオ。常に白いパンツで膝上長っ。本当にスタイルがいい。歌もいいけどセリフの声がいい,改めて声が好き! ソロは1・2幕とも声が上ずったところがあってもったいなかったけど,繊細なベンヴォーリオでした。

 先週に比べ若者達がフラットに可愛いんで,「綺麗は汚い」での乳母(未来優希)の存在感,安定感が際立つ際立つ。ソロも絶品。歌えるって当たり前のようで難しいのねん。
 と1幕で感じたんだけど,終幕すると今日は本当にベテランの皆さんあっての若者達の物語だなあとと思いました。ロミジュリそのものが好きなんで、ジュリエットの「この胸がお前の鞘」とかパリスも墓で決闘して欲しいんですが,この舞台は二人の死のあとの大人達の自戒の歌がいい。そんな中残ったベンヴォーリオは可哀想なんですけどね。

 そして,初めて違う“死のダンサー”でした。宮尾さんの良かった方にはごめんなさい。うーん普通に上手いバレエダンサーだなあというふうに見えてしまって…。こういう振付です,こういうポーズをしますという消化いえ昇華されてないカンジ? だから特に最初の見せ場の「僕は怖い」なんかは次はこのパ,このパみたいで。バレエらしくモンタギュー&キャピュレットの若者達の動きとは全く違うから,異物感を出したいのねーというのはわかるんだけど。
 単に好みなのだろうし初演も中島さんで見てたから刷り込みかもしれないけど,中島さんの死はダンスとしてより“死”という概念を身体の動き,その気配だけで具現化してるのです。そして圧倒的な存在感はヴェローナの街に深い影を落とす。

 城田ティボルトも改めて思い出して面白い。こんなに美しくてキャピュレット家の跡取りとして認められ期待されてと,産まれたときから全て与えられ満ち足りているはずなのに,常に飢餓感が離れない。でもその欠けた部分を満たすはずなのがジュリエットに見えないのが残念だなー。キャピュレットの若者達の中にいるとギラギラしているけど更にキラキラな場違いな高級感が目立って,良く悪くも華があり過ぎる。舞台あらしかーっ。やっぱりこの世のものではないトート最高! トートも本来は“闇の帝王”なんて人形(ひとがた)ではなく“Tod−死”なんですけど。いや城田トートは“闇の王子”でしたよ。

 ともあれ,キャストが違うと相対化されるのが面白いなあ。14日はいい意味ですごくデコボコ,21日のはとてもバランスが良い。演ってる方も見る方も慣れて来たのもあるかもだけど。まずは2公演分の感想でした!

ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012

♪今日は朝から現場仕事でただでさえ消耗してたけど消耗してるからこそ頑張って行ってきました『ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012』。すんごい面白かったです!

 品川プリンスシネマのシアター・ゼロで。ここは元IMAXシアター(あと少し持てばブームに乗れたのに)なので,単に大画面てだけじゃなくてスクリーンがすごく近いので臨場感がハンパないんです。レミゼもかかってるのでもう一度ここで見ようかなと考えてますが、ライブ感あふれるミュージカルをぜひ! 公式サイトによるとプリンスは2/8(金)まで(13:00/18:35)。次の週(都内)は立川シネマシティでこちらも音響が素晴らしいんですが。

 舞台を最初に観たのは中学か高校生(ミッション育ちで既にキリスト教に懐疑的)で初ミュージカル,四季の地方公演でした。聖書の世界そのままなのでエルサレムバージョンかと。そのときはユダが主役!?ってくらいで残念ながらミューファンにはなりませんでした。今回アリーナ公演なので舞台装置よりも音楽が前面に出て,よりもロックな音楽とロックな人物描写が強く伝わったせいかもしれませんが,正に受難曲なんですね。
 (J.S.バッハの)受難曲はマタイの方が有名で確かにドラマティックで素晴らしいけど,ヨハネが好き。トンガってるっていうかクールなんです。「十字架にかけよ!」とか痺れますよ~,バッハはロックと親和性がある。っていう話じゃなくて,受難曲は各福音書がベースで(ヨハネは一部だけマタイも),考えてみたら聖書ではイエスが内面を吐露するのはゲッセマネとエリエリレマサバクタニくらいなんです。

 でもこのミュージカルは過分にエモーショナルにオリジナルの言葉でイエスもユダも歌いシャウトします。でも何を考えてるのかを完全に言語化してるわけではない。ただその心情が音楽に乗り,またその表情で訴えかける。だからスクリーンでアップになるアリーナ公演はその音楽性の表出と共にこの作品にあった上演形態だったのかもしれません。わたしが 演奏会形式オペラが好きなせいも多分にありますけどー。そしてやっぱりALWって天才!(サラ好きすぎ!)

 センシティブでイエスを愛してるユダが素敵だけど,カヤパ様の悪役ですが何か?な存在感に鷲掴みでしたよ! 若者達の疾風怒濤な狂気とシニカルな大人達の対比が動と静で互いを際立たせていたと思います。 あきらかにゲバラぽい造形のイエスもよかった。十字架が浮かび上がるのは目新しい演出ではないけど「この人を見よ!」となりますねえ。

 できればもう一度映画館で観た〜い! 5月にディスクが出ます。そっこー予約したっ。

(追記)
 代休の2/5に2回目見ました。そーいえばいろいろ書くの忘れてました! てゆーかこの公演のことより懐かしいキリスト教の思い出語ってましたー。

 マグダラのマリアが化粧を落として白い衣装になるのは感動的なのに,どーしても肩の“女力”のタトゥーが目に入る度に受けてしまった。
 いや“女力”ってその通りなんですけど。ユダがイエスに与えられず受けられなかった愛は女の力だからこそなんですよねー。そもそも聖書は女性の力をとても評価してるのにパウロめー。その後マルタの妹マリアのエピとかなんでもマグダラのマリアに集約してるのも気に入らない!

 あと,もともと頻出する“3”も目立ちました。BELIEVE BELIEVE BELIEVEとキャッチが入ったゲバラぽいイエスのポスターが3つ並んで,これはペテロの否認(三度知らないという)を想像させる。でもは受難曲で超盛り上がる否認もここではユダを立てるためにペテロはちょっと薄味かなあ。
 マリアの香油は銀貨300枚なのにイエスを売ったユダが得たのは30枚。でもこれは聖書には香油は300デナリなんですが。他にイエスの布教が3年だけど,30年にも90年にも感じるとか,39回ムチとか。

 長い髪のユダの造形がいわゆるキリストのイメージぽい気がする。黒髪のイエスは肖像画で流布されたイメージではあるけど,二人のキリスト的な? カーテンコールが二人並んで出てきたようにどちらかが,ではなく二人が主役。若く美しいキリトはうれしいな。英雄は高めの声だよねー。
 受難曲ではバスなんでちょっと年配の人が多かったりするけど,わたしの理想のシュテファン・マクロウド(スイス)はとっても若々しくて美しい声なの~。とやっぱりジーザス以外の話過多だったりする。

 そうそう『駆け込み訴え』読み直しまして,ああ太宰ってヘテロなんだなあとちょびっとあきれました(ごめんなさい太宰は基本ダメなの)。この『ジーザス…』ではイエスを同じく“just a man”と歌いながら愛憎半ばして,あたかもマリアになりたいマリアのように素直に愛し愛されたいと希求する。でももっともっと理想のキリスト像を追い求めるからこそ否定してしまったのねー。愛する人であり,またあるべき自分であったのかもしれませんね。せつないわ…。

シラノ

♪新年半月過ぎてしまいましたが,しごと忙しいけど観るものは観なければ!ということで,ブベニチェク・ニューイヤーガラ~カノン~(バレエ,1/5),東京国立近代美術館 60周年記念特別展 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年(1/13)と濃かったんですが,まずはまだ上演されてるものからとゆーことで,日生劇場ミュージカル『シラノ』から。

 1/12(Wキャスト:濱田めぐみ&田代万里生),1/14(彩吹真央&平方元基)。

 シラノというとドパルデューの映画しか知らなくて(ちゃんとプログラムが取ってあったよ),それもうろ覚えついでに何も事前知識を入れないで観ました。原作(戯曲,新訳:渡辺守章訳)も2回目観てから買ったのでまだまだこれからです。

 とにかく鹿賀さんのシラノに尽きます。演技とかじゃなくて鹿賀さんの存在感なんですが,それがシラノという役柄にあっている。そしてなんといっても声がいい。登場して第一声できゃー結婚して!みたいな(いや声だけだし)。ロクサーヌとクリスチャンはWキャストなのでそれぞれの持ち味役作りはもちろん違いますが,概ね男前なロクサーヌにかわゆいクリスチャンというお似合いな二人でいいじゃないか,シラノはこんなにいい男なんだからもっと素敵な人に見初められて…では話にならないわけですけど。
 そもそも鼻がでかいくらいどうだっていいじゃないですか!というカッコよさで,うーんでも喜劇的に描いてるだけでもっとフリークス的だったんだろうか。いや実在人物のシラノにそこまで描写はなさそうです(本物シラノのことは後述)。
 舞台もお腹を空かせた彼に少女がまるでファンになっちゃったみたいに接するし。それにシラノっていくつなんだろう? ロクサーヌはいとこで,お兄様って呼び方はそもそもそんなに年の離れてるわけでもないから,ドパルデューや鹿賀さんのような貫録のある人が演じるけど。
 実は肉体的欠陥と思い込んでいるのはシラノだけで,単なる不器用というのは違うコンプレックスとプライドの絶妙なブレンドが作り上げた性格と挟持が女性を遠ざけてるだけなのかなあ。遠ざけてるというのはシラノだけの思い込みかもしれないし,そここそが魅力で。『白野弁十郎』として日本で人気を博したもよくわかる,単純なヒーローでもピカレスクなアンチヒーローでもないですね。

 舞台の話に戻ると,初見ではミュージカルである必要性あるのかなあ?というのが正直な感想で,レトリックを駆使した台詞また言葉そのものが主題なのためか歌が少なめで,印象強いメロディもガスコン隊くらいでした。もちろん心情は歌い上げた方いいし特にシラノとクリスチャンは共謀者として秘密,また互いに真反対なコンプレックスを抱いているので特にそういう部分は独白ではなく歌い上げた方がこちらに届くものです。

 三角関係ということで,どうせなら『椿姫』や『オペラ座の怪人』みたいな三重唱があればいいのに,例えば「神さまクリスチャンとお兄さまをお守りください〜♪」「ああロクサーヌ愛している〜♪」「この想い知られてはならぬ〜♪」みたいな。と妄想してたんですが,2回目でやっとわざわざ3人一緒に歌わない意味がわかりました。
 まずバルコニーのシーンはわりと単純に,シラノがクリスチャンの代役をしているので声色を真似ていることに気付かせではならない。またロクサーヌとクリスチャンの二重唱に取り残されるシラノの孤独がはっきり視覚化される。
 逆に,毎日届く(クリスチャンを装ってシラノが書いた)手紙を読んで戦場で駆けつけたロクサーヌが,本当に魂の通い愛し合っているのはシラノとロクサーヌというこの二人の距離を置いた二重唱の間に呆然と立つクリスチャン。3人の想いが同時に伝わらないからこの行き違いが起きていること,誰と誰が惹かれ合っているのかを残酷なまでに伝える手法なのでした。
(追記:3回目1/26観たらクリスチャン歌ってましたね。でもほぼユニゾンだから〜)

 やっぱり初見のあとはシラノ一人芝居ってもいいんじゃないかなとも思ったんです(そしたら白野弁十郎は一人芝居の上演形もあったそうですね)。だって(シラノの愛する)理想のロクサーヌ,(シラノのなりたい)理想のクリスチャンっていうのはシラノの中にしかないから。
 キャストの良し悪しではなく,そんな理想は存在しない。むしろシラノは理想を追い求めるのではなく,自分をさらけ出して生きればよかったのに,むしろみんな幸せだったかもしてない。でもそれが出来ないからこそシラノで,誇り高い生き方・心意気も持ち主なのです。そういえば日本語訳の話で必ず書かれる「心意気」ですが,実はご自慢のレトリックではなくその心こそシラノの一番美しい部分,シラノらしさなのでしょうか。

 クリスチャンは最期こそシラノのおかげでロクサーヌに芯から愛されていたと思い込んで死んでいきますがシラノの共謀してるのですから,何もかもわかっていてだからこそ悩みます。可哀想なのはむしろ一人だけ何も知らないロクサーヌです。気付けよ!って話だけど,いや気付いていたのか…どうなのでしょう。
 そのあたりはあえて明確にはしていませんが,役作りは二人のキャストでかなり変えていて,クリスチャンの死から15年という歳月を濱田さんはその前を子どもっぽく,その後を声色など老け演技で作っていました。これはどちらかだけでいいんじゃないかなあ。彩吹さんの方が表面上はさほど変わらないようでいて,むしろはっきり変わるというよりも登場から徐々に成長していったようでこちらの方が個人的には好きかなあ。
 クリスチャンは2人とも可愛くて歌も上手いのでヨシ。ただ平方くんはお見送りのときの方がキラキラで,もちょっと舞台で活かせてないのかなあ。もったいない。他キャストでは鈴木綜馬さんのド・ギッシュがいやな役回りのようでいて,どこかキュートで実は憎めない美味しい役どころでした。

 オケはパーカッションの特にスネアドラムのリズムが主導する単なる伴奏ではない音が,世界観を作るひとつになってました。セットはシンプルですがとてもよかった。これは初演のときと同じなのかな。最初の芝居小屋の雰囲気を作る幕が落ちるとつや消しの銀の大きな板が現れ,投影した画像が象徴的で,最近のセットを作らないで写真や映像の投射は好きな演出ではないんですが,とても効果的でした。
 それにプラスして例えばバルコニーのシーンはジャスミンの花が画像と共に造花のアーチとロクサーヌのドレスの花,シラノが昔を思い出すときの鮮やかな緑,そしてなんといっても修道院の真っ赤な紅葉にはらはらと散る大きな葉。シラノの最期にはまたジャスミンの花。具体的なイメージであり彼らの心情であるという舞台ならではの演出でした。

 最後に(ってヒストリアか),公演プログラムに実在したシラノは同性愛者だってあって地味にショックなんですけど…。いや有名な話として戯曲にも注釈でいくつかありました。えーでもそしたら,本当に愛してるのはクリスチャンで純粋に彼のために代筆したのー?じゃなくてロクサーヌがフィクションなんですけど。
 そう思うと本当にロクサーヌを愛してるならクリスチャンの誇りを守るよりも,真実を話した方がシラノ自身のためでもロクサーヌの幸せのためでもあったのに!という疑問は解決し,シラノは美しいクリスチャンと自分が一体となって理想とする男性になっていたときが一番幸せだったんじゃないかという,舞台の感動とは何だか違うところに着地してしまいました。

 

 いやホントにいい舞台だったので,ぜひ生で体感して欲しいです。2幕はハンカチを用意して! 東京公演:1/6~1/29日生劇場,大阪公演:2/8〜10 新歌舞伎座;ホリプロサイト
 公演中にシャンテでパネル展やってます。【左】サインパネル【右】ガスコン隊の衣装

エリザベート20周年コンサート

エリザベート20周年コンサートでまたシアター・オーブ(10/28)。何といってもこの公演が最後というマヤさんのシシィが素晴らしかった! ああ“エリザベート”ってミュージカルなんだよっていう。特に「私だけに」でもうがっつりつかまれて,更に1幕終わりのリプライズの額縁からにうっとり。正にヴィンターハルターの肖像画そのもの。
 2幕はトートとのドスの効いた「私が踊る時」を楽しみにしてたんだけど,これは勝利のはずがむしろ虚しさを感じ,「魂の自由」の悲痛さはどうでしょう。 最期はトートダンサーもいなくて,自分で喪服を脱いでトートとのところへ向かう“私”の人生を歌いきってくれました。

 「愛と死のロンド」を歌うトートにびっくりしたけど(ウィーン版でも歌うようになったんですね),ドイツ語のマテのトートは色っぽくて,フランツは美声,ルドは美形で,ルキーニもゾフィーも良かった。そして生オケを舞台に載せてのコンサートで心配してたアンサンブルがまた良かった。ミルクとハスの迫力!
 トートダンサーも少人数だけど,大きく翼を使ったのが面白い。片翼なのがまた意味深。後ろのスクリーンは思ったより使わなくて(シシィが落ちてくるかと),主に照明でシンプルな演出でした。

 思ったよりずっとほとんどの歌を歌って,でも舞台転換もないのですごくスピーディで次から次へと流れるのが面白かったけど,せっかくこれだけの人達が来てるからちゃんと舞台装置でじっくり観たかったなあ。短い期間だったし本当にもったいない。
 やっぱりエリザの楽曲って素晴らしいなあ。ロミジュリもすごくよかったけど,ロミジュリは1曲1曲が独立しててもちろんそれが悲劇を積み重ねているのに比して,エリザは繰り返しと変奏でより有機的に繋がってく。シシィとフランツも出会いと夜のボートの対比はリピるほど感慨深いし。うーんエリザってよく出来てる!

 コラボメニューのエリザベート・カクテル(ノンアルコール)とドーナツ。カクテルは菫色,ドーナツはシシィのあの白いドレスとスターのキラキラをイメージしてます。ロミジュリではドーナツ食べそびれたので開演前にばっちりです。目の前は渋谷の街だけどっ。

ロミオ&ジュリエット〜ヴェローナの子どもたち〜

 

フランス版ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』初日(10/6)に初シアターオーブです。そして,1Fホワイエにくりぬき…。公演後サインが入ったらしいです。


 オーブのホワイエはすごく狭いです。こうして天井は高くてカッコいいんだけど,舞台と客席を作って残ったところ〜というカンジ。

 休憩にコラボメニュー。赤い薔薇の入ったジュリエットカクテル(ノンアルコール。ロミオのは青でアルコール)。ドーナツは残念ながら売切でした。

 初日ならではなのか,幕が開く前に気合を入れてる声が聞こえました! 日本版,宝塚版と見て,待ちに待った来日公演は,なんといってもアンサンブルがダンスというよりアクションで迫力でした。

 ロミオとジュリエットはおいていて(だってこの甘い2人というか,ロミオのせいでー),ティボルトとマキューシオがよかった!大公もカッコいい。ティボルトはワイルドな見た目に比して,甘くせつない歌い方がいい。
 マキューシオは日本版は妙に目立たなかったような気がしたんだけど(むしろベンヴォーリオの方が目立ってた),青いモンタギューの中1人紫の衣装(彼はモンタギューの人間ではない,大公側)で,そんな見た目だけでなく、エキセントリックで明らかに違う側の人間。最初の見せ場・聴かせどころの「マブの女王」でマイクが故障しちゃったみたいで可哀想というより申し訳ない。途中からハンドマイクにしたんだけど,むしろロックぽかった。もう少し早く用意出来ればよかったんだけど。
 2人は途中で死んじゃうわけで(ロミオめ~),でもマキューシオ,ティボルトの死~絶望のデュエットがクライマックスのように拍手もとても大きかったです。

 女性の演じる“死”は肉感的過ぎて,やっぱり中島さんの常に異質なこの世ならざるものをまた見たい~。でも最後のジュリエットに造形が似てるのが狙いなのかも。
 いやロミオとジュリエットは悪くはないんだけど,二人の周りの若者達,大人達の方多面性を感じて,何よりこのミュージカルはそれぞれのナンバーがどれも印象的なメロディなので,主役の二人だけに目がいかないんですよね。それでも「エメ(Aimer)」が一番美しく,一番哀しい。許されない恋,誰もが知っている悲劇とはいえ,結婚式のシーンがこんなに哀しい響きにしているのは達観してますよね。

 今日の席はほとんどフラットな6列目だったんで,この舞台はいろいろ対比があったり高い装置があるのでもう少し引いて見た方がいいかも。ピットがないので,正に目の前で!という迫力は堪能出来たけど。
 あと音響もガンガン来ていいけど,反響のせいか前だからか人の声がそこから発してるように聴こえなかったなあ。字幕は左右で,前だと見ようとすると舞台が視角を外れます。

 最後にマキューシオ! …知らない人の手ですよ。(初日だけじゃなくて)終演後,ホワイエにキャストが出て来ます。

 次は20日に行きます。やっぱり歌は原語で聴いてこそ音に乗っているのがわかるので,この機会にぜひ! 来日公演がまだまだ続いてくれるとうれしい。

モンティ・パイソンのスパマロット@赤坂ACT

 

ミュージカル『モンティ・パイソンのスパマロット』面白かったです。元になった映画『モンティ・パイソンとホーリー・グレイル』は前から観たかったんですがDVDがずっと品切れでよーやく廉価版が出たのでこれから観ます。
 ええ,もちろんアーサー王と円卓の騎士ファンですから突っ込みどころはたくさんあります。何より麗しの湖の騎士ランスロット様への非情な仕打ち…。アーサーよりモテモテなランスロのパロディなんだろーなーと思いますが~。そしてアーサー王伝説だけじゃなくて,ミュージカル自体のパロディになってますね。特にオペラ座の怪人なんかは地下に行くゴンドラだけじゃなくて,如何にも作り物の蝋燭が降りて来てるところが,単にオペラ座…というより「オペラ座の怪人の舞台」をなぞってる。

 1幕に比してちょっと2幕が弱いような気がしたんだけど,湖の貴婦人の出番が少ないからかも! そもそもその彩吹さんの歌のウマさとそれを含めた自己パロディが鍵だったかな。特別なファンというわけでもないけど,彼女がいないと舞台として成り立たなかったんじゃないかな~ってくらい存在感というか存在意義があったのではないかしら。一番歌が上手いというかほとんど彼女しか歌えてないというか。ホントどのシーンも面白かったし,紅一点とはいえ舞台がぱあっと輝いてました。いや常に輝かせる演出ではありましたが。
 そしてグィネヴィア妃が出てこないのはアーサーを独身にしておきたかったのね。おかげでランスロット様の設定がなくなっちゃったけど。ひとつ不満なのは韓国ネタのシーンがシニカルな表現ではあると思うんだけど,ちょっと長過ぎる。その後の伏線にもなってないし~。

 湖の貴婦人以外だと従者(兼馬)パッツィがいい。ちょっとドン・キホーテとサンチョ・パンサみたいでもありますね。彼は馬の闊歩する音を効果音としてココナッツを鳴らしてるのです。この登場シーンのコント長過ぎと思ってたら,次から音が出る度におかしい。ああ,そういう狙いだったのかと。いや登場からおかしかったですけどね。で,最後の方に常に“一緒にいるパッツィ”というのがクローズアップされる。
 モードレットは出て来た途端にお前帰っていいって言われて,ハッピーエンドなアーサー王でした。G13はGrailの13番なのかな。円卓の13番だとホントは不幸が起きるのに幸せになります。

 カフェの特別メニュー,SPAMむすびがとってもおいしかった! そして夜もSPAMステーキにしちゃいました。そもそもSPAM缶買うの初めてだしっ。

 

 アルファードリンク(スケート場)は劇場の手前にあります。美姫ちゃん狭かったろうなあ。ここはクリムキンが滑ったときに見にきましたよ。アルファードじゃなかったけど。【右】足元にTBSのブタ!おお,かわいいっ。ここの画像は全部iPhoneで撮りました。

オペラ座の怪人25周年記念公演とロミジュリカレーと来日ミュージカルとか。

『オペラ座の怪人』25周年記念公演inロンドン,ちゃんと観ましたよー。
 もっとコンサート形式なのかと思ったら,電飾とはいえセットを映してほぼ舞台になってました。スペースを作るためかオーケストラを上げてて!,平土間は聴こえないんじゃないか…ってシンセ使ってるし,生音だけなわけないですね。しかしロイヤル・アルバート・ホールってすごく大きいんですねー。
 わたしは舞台版を観たことないので(来日しないしー),こうして大きな映像と音響で観ることができてうれしいです。『オペラ座の怪人』って,歌はもちろん素晴らしいけど,やっぱり"The Phantom of the Opera"を序曲風に長いインストゥルメンタルで流していているのがいいなあ。
 さすがに映画を30回も観てると"Think of Me"でオケピットの下から地下のファントムさんが聴いてる姿を想像して目頭熱くなってしまいます。歌はもちろん本職の方が生の舞台で演じるということを含めて全く別次元ですが,うん映画はそうやって映画でしかできないことで表現してるんだよなあと今更ながら思い出します。
 コンサートはたった2日間という貴重な機会ですが世界中にこうやってスクリーンで見せること前提のすごい舞台で,本編もですがカーテンコールで歴代ファントムとサラ・ブライトマンの"The Phantom of the Opera"がハイライトですね!
 全国順次公開中で,都内は日比谷のスカラ座は終ってしまいましたが,品川プリンスシネマで11/19~25上映します~。字幕は四季版なので,なくてもいーのにと思うのですが。
[追記:TOHO六本木ヒルズ11/5~18追加上映が決まったそうです!]

 

♪ついでにサントリー美術館に行ったとき食べたukafeのロミジュリメニューを載せとこうっと。東京公演終った後10/11までやってました。ロミオ&ジュリエットカレー(辛口ビーフ&甘口野菜)と眠り薬ドリンク。レモンシロップを入れると青いハーブティがピンクになります。ひらたくゆーとリトマス試験紙?
 実はフランス版ロミジュリCDがようやく届いたのでヘビロテ始めたばかりだったのです。ACTで速報チラシが出てた来日公演は来年オープンのシアターオーブでの上演が決まりました! エリザベートのガラコンサートもあるので今から楽しみ~。帝劇のも行きますが。
 フランス語のミュージカルも素敵なのねーというのが実感出来たので,ジュベールさんの貴重なお耽美プログラムMozart L'opera rockを観てみたいなあ。

ロミオ&ジュリエット

 

♪ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」,赤坂ACTシアター7/23ソワレ。ダブルキャストは[ロミオ:城田優,ジュリエット:昆夏美,ティボルト:平方元基,マキューシオ:平方元基,死:中島周]。
 2階席でしたが,ここはだいぶ1階に被ってるので舞台は思ったより近くて全体がよく見えてなかなかよかったです。ACTは仮設のとき行って以来ですが,それがたまたまのリヨンオペラ座バレエ《ロメオとジュリエット》だったんですよねー。プレルジョカージュの演出で階層の違う二人という読み替えとしては単純ですが,ゴルチエの近未来の衣装が彩る視覚に訴える舞台でした。ティボルトがカッコよかったー(って実は結構役回りが違うのをすっかり忘れてます)。

 このミュージカルはフランス発ですが,なんといっても「Aimer」「世界の王」を始め,楽曲が素晴らしい。ロミジュリって,プロコフィエフのバレエ,チャイコ,ゼフィレッリ(ニーノ・ロータ)やバズ・ラーマンの映画音楽,バーンスタインのウェストサイドストーリー(WSS)…,本当にたくさんの上演形態があって(グノーのオペラは上演機会少ないけど),それぞれがこれだけ印象的な音楽を作ってるのに,また全く新しいメロディが出てくるんだ~と不思議なくらいです。観衆も創作者もそれだけ惹きつける普遍的なテーマなんだなあ。

 城田君目当てですが,正直ロミオのイメージではないなあとは思っておりました。金髪はダブルで共通だけど似合わない~。何よりジュリエットの昆さんがちっちゃいのでかがまなければいけないのもあるけど,他の人より飛びぬけて大きいので常に前かがみで若者らしさがないとゆーか。トートはふんぞり返ってる人外でよかったんでっ。いい意味で異形が似合ってた。
 でもでも演技や声はよかったと思うんですけど~。特に声は最初の方はカワイく作ってるなあと聴こえたけど,ちょっと甘い声質がせつなく,一生懸命なところがいっぱいいっぱいのロミオぽい。ジュリエットは決して下手ではないけど,全く演出が感じられないただそのまま若くて可愛いジュリエットを素で出せる人が立ってるだけみたい。そーすると“ロミオとジュリエット”というタイトルロールの相乗効果での哀しさが半減しちゃう。

 “死”は素晴らしかった! 常に二人というかロミオとヴェローナの町に付きまとう影。この回の中島さんはバレエダンサーなので,他のダンスとは全く違う空気をそこにいるだけで醸し出してる。彼がいるといないとでは全く舞台の印象が違ったことでしょー。

 両家の違いはふつーに色で分けられているんだけど,赤系とモノトーンならそれだけでいいのに,それぞれ豹柄とキリン柄を重ねてるのでぱっと見がすごくごちゃごちゃしてる。2階でもごちゃっとしてるので1階はさぞ…。どーしてもミュージカルの若者のダンスはガキっぽく見えてしまうんだけど,この衣装で余計何をいきがってるんだとしか見えない。
 主要キャラは別衣装で際立てるはずが何故かマキューシオの衣装は群舞と似たようでなんか目立たない。彼は大公の親戚で完全にモンタギュー側ではないので,そういう複雑さも伝わらない。その代わりベンヴォーリオが都合よく出張ってる。親友というには情を出す見せ場がないのに(浦井君はよかったよん)。

 二人を始めとする若者達よりもちゃんとソロのある大人たちの方が目立ってたような気がする。もともと芸達者が揃っていたので,歌も演技も上手い! 一番聴き応えがあったのは乳母(未来優希)のソロ。
 両家はキャピュレットの方に複雑な事情があって,キャピュレット夫人(涼風真世)が甥のティボルトと浮気してたり,ジュリエットはまた別の浮気の子とか,キャピュレット興は素敵にちゃらい(石川禅さん素敵よお)。

 ティボルトは夫人と関係しながらもジュリエットを一番愛してる。なかなか熱演。なのにジュリエットは全く無関心なのかティボルトが愛するロミオに殺されても葛藤がない。少女ジュリエットが愛する人を見つけ,でもその彼が自分を愛してくれる大切な従兄を殺してしまった。それでもロミオを選ぶという,単に恋を知っただけでない3日間の急成長があるからこそ,若者達の悲劇に涙するのではと思うのです。このへんはバレエよりもWSSが兄妹なのでより強調したアレンジですね。乳母→アニータも。
 それはロミオも同じで,彼の描写はもともとそんなに変わらないけど,マキューシオとの繋がりが薄いのと演出からとても衝動的にティボルトを殺したように見えない。マキューシオがロミオのせいもあって死んだというのがあって,その後確信的にティボルトに向かってる。バレエみたいにマキューシオが大丈夫だよ~といつものように踊って,突然こときれる,と衝動的にティボルトを殺してしまうみたいな方が感情の動きが自然なのに。
 そもそもこのシーンで既に若者達はロミオとジュリエットの関係を知ってるというトンデモ設定なので,そしたらこの争いの発端もロミオにあることになっちゃわないのかしら。そのへんの観客は知っているけど,彼らは知らないので進行してるのよね…という神の視点やたくさんのすれ違いがあったからこその短い期間の不幸な出来事が強引ながらも成り立ってたんじゃないかな~。

 携帯とかスマフォとか(ジュリエットはパパが18になるまで許さないので直接連絡は取れないのです…)中途半端な現代演出よりも皆の感情の変化や互いを想う気持ち,そのすれ違いが生む悲劇といった肝心なところが伝わらないということの方が非常に残念。キャストは皆さんとても頑張っていたしよかったのでますますもったいない。とにかく総じて面白い舞台でしたがいろいろもったいないなーという感想です。

 せっかくのダブルキャストなので見比べてみるとまたいろいろ見えて来たかもしれませんが,もー楽日に向けてチケットは当日立ち見しかないのでした。でもでも来年のフランスからの来日が今からすっごい楽しみ! バレエも久しぶりに観たいなあ。実は初生バレエが森下さんのジュリエットなのですよ。ふつーにマクミラン版が好きですが,オケが舞台に載ってるワシーリエフ版はロストロポーヴィチが亡くなってからやってないのでしょーか。あれは音楽だけでも雄弁なプロコを活かして最後は指揮者が全部持って行ってしまう感動的な演出なのですよ~。

舞台『プライド』

『プライド』観ちゃった@シアタークリエ,12/7 ソワレ。映画に続き舞台です。話最後までやるというので,あんなに日本とヨーロッパを行ったり来たりしてるのにどーするんだろうと思ったら,舞台はシンプルで4人しか登場しません。状況は全てセリフで,歌はミュージカル的に心情やセリフ…ではなくあくまで歌として。でも歌があるとますます時間が足りないのに,ちゃんと(いろいろ省きつつ)史緒ちゃんと萌ちゃんと出会いから別れまで力技でしたっ。
 歌える二人を使って,オペラもジャズも日本の歌もオリジナルも何でも歌わせちゃえというのがむしろ趣旨のよーな気もしますが,この二人に比して男性二人の影が薄すぎるのはまあしょうがないのかな。萌ちゃんはともかく史緒ちゃんがいつ神野さんが好きになったのかが全くわからないけど,原作もわかんないんで,そこは。蘭ちゃんも更に都合よくいいひとだけど,まっったく似合わない女装しなくてもよかったのに。やっぱり普通の男の子がドレス着て,映像でごまかせずというのはかなりキツいです。
 二人の歌は,これだけ歌えるのはすごいの思うのですが,うーん,オペラ(ちゃんと原作と同じコスタディーヴァとマクベス夫人)は頑張ったけど,やっぱり発声が違うからなあ。特に史緒ちゃんは歌い出しから,これは上手く歌えないって演出?と思ったら結構長く歌い続けるので,えーと,歌えなくなるまでは上手いというテイなのだろうか? オリジナルの曲はフーガを使ったりしてるのでバッハぽーいと感じたり,単なるハモりじゃなかったり頑張ってました。やっぱり歌で張り合う二人でないと話に説得力が出てこないですもの。萌ちゃんのブラックなとこがだいぶ薄まってたのでかなりおいしい役になってたけど。新妻聖子ちゃんはブランチで見てたんだけど,ちっちゃくて可愛い!
 最後の締め方は舞台の方がむしろ正反対の二人が歌で一つになるみたいで,とてもよかったと思います。オペラの方は留学しただけでシュターツオーパーの舞台に立てちゃうの?(原作はフォルクスだけどフォルクスって言ってたっけ? どちらにしてもありえないけど)みたいだけど,じゃあオペラを捨てたってわけにもできないしねー。原作読んでてもいろいろ変換して理解してなんとなくそーいう話ねーと納得したけど,原作知らない人はわかったのかなあ。客席(役者さん達のファン?)は意外にマンガを読んでるような層は少なそうだったから。まー生ってのはやっぱり面白いので,一度くらいはどーぞ。~12/19。